NetApp ONTAP S3はVeeamでAmazon S3と同様に使える?増分・合成フル・容量を検証

NetApp ONTAP Select S3 を、Veeam Backup & Replication(以降、VBR)のS3互換オブジェクトストレージとしてバックアップリポジトリに利用した場合、Amazon S3 と同じようにバックアップデータが保存されるのでしょうか。特に気になるのが、増分バックアップや合成フルバックアップを繰り返した場合のバックアップチェーンと、実際に ONTAP S3 のバケットが使用する容量です。
そこで本記事では、VBR から NetApp ONTAP S3 へ実際にバックアップを取得し、フルバックアップ・増分バックアップ・合成フルバックアップを実行しました。VBR が表示する転送データ量と、ONTAP S3 側で確認できるLogical Used Size および Object Count を比較し、ONTAP S3 を VBR のオブジェクトストレージリポジトリとして使用した場合の動作を検証します。
ONTAP Select への S3 接続設定そのものについては、こちらの記事でも解説しています。
検証環境
- 仮想化基盤:Proxmox VE 8.4.18
- バックアップソフト/OS:Veeam Backup & Replication 13.1.1.18 試用版 / Windows Server 2025 24H2
- バックアップ対象:RockyLinux 9
- バックアップリポジトリ:NetApp ONTAP Select:9.18.1 試用版
- ネスト仮想化基盤:ESXi(VMware vSphere Hypervisor 7.0)

バックアップソースのサイズ
対象:RockyLinux9/Proxmox VM
VM ディスクサイズ:50GB
RockyLinux ファイルシステム上の使用量:約11.5GB
# df -h
ファイルシス サイズ 使用 残り 使用% マウント位置
devtmpfs 4.0M 0 4.0M 0% /dev
tmpfs 1.4G 0 1.4G 0% /dev/shm
tmpfs 556M 11M 545M 2% /run
/dev/mapper/rl-root 44G 11G 34G 25% /
/dev/sda1 960M 485M 476M 51% /boot
tmpfs 278M 32K 278M 1% /run/user/0フルバックアップ時の転送量
VBR 転送データ量:7.6GB(重複排除・圧縮後にONTAP S3 に転送したデータ量)
なお、フルバックアップにおける重複排除・圧縮効果による削減率は約34%(7.6GB/11.5GB)でした。転送時間が異様に長い理由は ONTAP Select が HDD 上のネスト ESXi で稼働しているためですので無視します。

フルバックアップ後の ONTAP S3 バケット容量
バックアップデータ転送前の S3 バケットの容量・使用量は以下のとおりです、バケット”veeam-backup-bucket”のサイズは300GBです。
single-cluster::> vserver object-store-server bucket show -vserver svm_s3 -bucket veeam-backup-bucket -instance
Vserver: svm_s3
Bucket :veeam-backup-bucket
Type :s3
Versioning :disabled
Uuid :8903a930-98ad-11f1-b3c1-00a0b8ade4d1
Volume :fg_oss_1786800611
Size :300GB
Logical Used Size :40KB
Object Count :10
Incomplete Multipart Uploads count :0
Encryption :false
Comment :
Qos Policy Group :-
Role :standalone
Bucket Protected :false
Bucket Protected On ONTAP :false
Bucket Protected On Cloud :false
Bucket Protected on External Cloud :false
NAS Path :-
Current NAS Path :-
NAS Path File Handle :-
Is Mutable NAS Path :-
Object Lock Retention Mode :no-lock
Object Lock Default Retention Period :-
Consistent Entity Tag for NAS bucket :-
single-cluster::>VBR がバックアップデータを S3 バケットに保存した場合、以下の2つのパラメーターが変化するはずです。
・Logical Used Size(現在値: 40KB)
バケット内に保存されたオブジェクト(バックアップデータ)の論理的な合計容量を示します。
・Object Count(現在値: 10)
バケット内に格納されているオブジェクトの総数を示します。データブロックやメタデータファイルの数がカウントされます。
フルバックアップ完了後、以下の数値に変化しました。VBR が表示する転送データ量より若干大きいのは、データブロック以外のメタデータファイルが加算されているからと思われます。
Logical Used Size : 7.76GB
Object Count : 15908
single-cluster::> vserver object-store-server bucket show -vserver svm_s3 -bucket veeam-backup-bucket -instance
Vserver: svm_s3
Bucket :veeam-backup-bucket
Type :s3
Versioning :disabled
Uuid :8903a930-98ad-11f1-b3c1-00a0b8ade4d1
Volume :fg_oss_1786800611
Size :300GB
Logical Used Size :7.76GB
Object Count :15908
Incomplete Multipart Uploads count :0
Encryption :false
Comment :
Qos Policy Group :-
Role :standalone
Bucket Protected :false
Bucket Protected On ONTAP :false
Bucket Protected On Cloud :false
Bucket Protected on External Cloud :false
NAS Path :-
Current NAS Path :-
NAS Path File Handle :-
Is Mutable NAS Path :-
Object Lock Retention Mode :no-lock
Object Lock Default Retention Period :-
Consistent Entity Tag for NAS bucket :-
single-cluster::>増分バックアップ時の転送量
VBR 転送データ量:264.9MB(重複排除・圧縮後にONTAP S3 に転送したデータ量)
増分バックアップにおける重複排除・圧縮効果による削減率は約73%(264.9MB/963.0MB)でした。転送時間は ONTAP Select が HDD 上のネスト ESXi で稼働しているため、参考にならず無視します。

増分バックアップ後の ONTAP S3 バケット容量
7.6GB(フルバックアップ時の VBR ⇒ ONTAP S3 への転送データ量)
+
0.26GB(≒264.9MB、増分バックアップ時の VBR ⇒ ONTAP S3 への転送データ量)
計 7.86GB です。ONTAP S3 バケットでは、8.02GB ですので、メタデータファイルの増加分を考慮するとほぼ同サイズが保存されたと考えてよいでしょう。
single-cluster::> vserver object-store-server bucket show -vserver svm_s3 -bucket veeam-backup-bucket -instance
Vserver: svm_s3
Bucket :veeam-backup-bucket
Type :s3
Versioning :disabled
Uuid :8903a930-98ad-11f1-b3c1-00a0b8ade4d1
Volume :fg_oss_1786800611
Size :300GB
Logical Used Size :8.02GB
Object Count :16885
Incomplete Multipart Uploads count :0
Encryption :false
Comment :
Qos Policy Group :-
Role :standalone
Bucket Protected :false
Bucket Protected On ONTAP :false
Bucket Protected On Cloud :false
Bucket Protected on External Cloud :false
NAS Path :-
Current NAS Path :-
NAS Path File Handle :-
Is Mutable NAS Path :-
Object Lock Retention Mode :no-lock
Object Lock Default Retention Period :-
Consistent Entity Tag for NAS bucket :-
single-cluster::>合成フルバックアップについて
Amazon S3 をバックアップリポジトリとして使用した場合、ローカルリポジトリと比較し、フルバックアップのファイルデータ(.vbk)が仮想的に作成されるのかどうか確認します。また、使用される ONTAP S3 バケットのデータ保存量も Amazon S3 と同様の仕組みでセーブされるのか確認します。
Amazon S3 における説明は以下の記事を参照ください。
Veeam v13でローカルとAWS S3のバックアップ保持期間を比較
以下はデフォルトのリテンションポリシー7日間において、7日目までのバックアップが完了した時のものです。赤線枠内のファイルは、初回のフルバックアップ時のデータとなります。日付は 2026/09/23 です。

この状態から、もし 9/30 に ONTAP S3 ではなくローカルリポジトリに増分バックアップが取得されると、10/01 の日付で合成フルバックアップファイル(.vbk)が保存され、増分バックアップファイルは生成されません。
しかし、Amazon S3 と同様に ONTAP S3 が扱われるのであれば、日付が 2026/09/23 のフルバックアップのファイルが消滅し、日付が 2026/09/24 の合成フルバックアップのファイルが保存されるはずです。

想定どおりです。日付が 2026/09/24 の合成フルバックアップのファイルが新たに保存され、日付が 2026/10/01 の増分バックアップファイルも保存されました。Amazon S3 と同様の動作をすることが確認できました。
次に、さらに翌日の増分バックアップ時の動作も見てみましょう。

さらに合成フルバックアップが日付 2026/9/25 として保存されました。増分バックアップも 2026/10/2 として保存されました。
以上から、ONTAP S3(オブジェクトストレージ)も Amazon S3 と同様に使用されることが分かりました。ローカルリポジトリと違い、フルバックアップファイルを追加で作成することなく、リテンションポリシーの日数内で初回のフルバックアップを仮想的に生成する合成フルバックアップを行ってくれます。
使用容量について
Amazon S3 と同様に、オブジェクトストレージをバックアップリポジトリとして使用した場合、Veeam は既存のバックアップデータを利用して仮想的な合成フルバックアップを生成します。
ここで重要なのが、Veeam のオブジェクトストレージ向けの Block Reuse です。合成フルバックアップの作成時、すでにオブジェクトストレージ上に存在するデータブロックを再利用できるため、同一内容のデータブロックを重複して保存する必要がありません。そのため、論理的なバックアップサイズと、オブジェクトストレージ上で実際に使用される容量には差が生じる場合があります。
今回の検証でも、バックアップ世代が増加しているにもかかわらず、ONTAP S3 の Logical Used Size はバックアップデータの論理的な合計量ほど増加していませんでした。これは、今回使用した ONTAP S3 が Veeam の S3 互換オブジェクトストレージとして動作し、Veeam の Block Reuse が利用された結果と考えられます。
Amazon S3、NetApp ONTAP S3 のどちらも、バックアップデータの容量セーブの観点では最適と言えると思います。
注意事項
今回の検証では ONTAP S3 バケットを不変性バックアップ(Object Lock / Immutability)として使用していません。ONTAP S3 は「Veeam Ready Repository」としての認定は Veeam から取得していますが、「Veeam Ready with Immutability(不変性オブジェクトバックアップ)」の公式認定は取得されていません。ONTAP 9.14 以降で S3 Object Lock 機能自体は提供されているものの、Veeam が要求する Compliance モードや、API の動作仕様との兼ね合いから、VBR からの Immutability 機能を利用したバックアップはサポート対象外、または動作保証外となります。
また、オブジェクトストレージとして使用する際には、ONTAP 設定においていくつかの注意点もありますので、商用利用する場合は以下の点について、注意をしてください。本記事では掘り下げませんのでキーワードのみ記載しておきます。
- 大量オブジェクト削除時のレジストリ設定(VBR 12.1以降のWindowsレジストリチューニング)
- 重複オブジェクトID不具合の回避(ONTAP 9.12.1P18以降が必須要件)
- S3バケット側機能(バージョニング・ライフサイクル)の無効化
- ランダムI/Oおよびメタデータ処理への影響を考慮した設計(フラッシュストレージの活用)
まとめ
今回の検証では、Veeam Backup & Replication(VBR)から NetApp ONTAP S3 バケットへのバックアップにおいて、Amazon S3 と同様の挙動でデータが保存・管理されることが確認できました。 ONTAP S3 はオブジェクトストレージとして機能するため、データはブロック単位で保存され、同一内容のブロックが重複して保存されることはありません。リテンションポリシー(保持期間)の経過時も、追加のフルバックアップファイルを都度作成するのではなく、既存のブロックと増分ブロックを組み合わせて仮想的にフルバックアップ(合成フル)が生成されます。 通常のローカルリポジトリ(ext や NTFS など)で発生しやすいバックアップデータの肥大化を抑え、最小限の容量増加で世代管理が行われることが実機データからも確認できました。
オンプレミス環境で容量効率の高い S3 互換バックアップリポジトリを検討する際の参考になれば幸いです。

